数字付き低音

数字付き低音とは、記譜されているベース音の上の和声を数字で指定する省略表現です。特にバロック音楽や初期のクラシック音楽で、ハープシコードやヴァイオルなどの伴奏楽器のパートに多く見られます。

数字付き低音には、演奏者に和音の意図を伝える役割がありますが、コード音を使用した即興のアルペジオフレーズなど、解釈による演奏を行なう余地も残されています。

数字付き低音にはアラビア数字、臨時記号およびホールドの水平線を組み合わせて使用し、和音の構成音の低音からの音程と、その長さの両方を指定します。たとえば下図の数字付き低音には、サスペンションが解決する位置や低音が変化しても、コードが変わらない場合が示されています。

1. 譜表の下に数字付き低音を表示するバッソコンティヌオパート

Dorico Pro の初期設定では、数字付き低音は対応する位置にグローバルに存在します。これは数字付き低音を使用するほとんどの楽譜には調性があり、各プレイヤーが同じ和音から得られる音で演奏するためです。したがって数字付き低音の入力が必要なのは一度のみで、場合に応じて複数の譜表の上に表示させることも、一切表示しないこともできます。また、数字付き低音の内容は、譜表ごとに音符に合わせて自動的に調整されます。ただし状況によっては、同じ位置の複数のプレーヤーに対し、それぞれ異なるコードを指定することが必要な場合もあります。このような場合は、ローカルな数字付き低音を入力します。

Dorico Pro は、入力した数字が暗示する音程を、その位置にある最低音との関係から割り出して保存します。このように数字が暗示する和声を意味的に理解することにより、Dorico Pro は異なる譜表上でも、音符の音程の移調や変更が行なわれた場合に、数字を調整して表示できます。

数字付き低音が使用された楽譜を移調すると、Dorico Pro では数字も合わせて移調されます。

Dorico Pro は、初期設定で太字のローマ字フォントの数字付き低音を使用します。数字付き低音に使用するフォントをプロジェクト全体で変更したり、数字付き低音のフォントスタイルの形式設定を編集したりできます。

数字付き低音はレイアウトごとに個別に、特定のプレイヤーの譜表上で表示と非表示を切り替えられます。またレイアウトごとに個別に、数字付き低音のデフォルトの表示位置を譜表の上にするか下にするかを変更できます。Dorico Pro が通常は数字を表示しない場合 (3rd の音程など) や、休符などで数字のベースノートを認識できない場合は、数字はガイドとして表示されます。

補足

数字付き低音は、和声分析で一般的に使用されるローマ数字などの記譜法にはまだ対応していません。これは将来のバージョンでサポートされる予定です。