ビデオのプルアップとプルダウン
Nuendo では、フィルム変換に合わせて、プロジェクトに含まれるビデオファイルの再生速度を上下できます。
場合によっては、ビデオファイルをフィルムの速度で再生し、オーディオの再生はそのまま調整しないと役に立つことがあります。
ビデオの再生速度をフィルムの速度に戻すには、オーディオの再生速度調整時の逆の処理を行ないます。NTSC 方式のビデオの場合、ビデオの再生速度をフィルムの速度に戻すには、+0.1% 速度を上げる必要があります。
ビデオの再生速度の変更は、「プロジェクト同期設定 (Project Synchronization Setup)」ダイアログで行ないます (「プロジェクト設定 - 時間 (Project Setup - Time)」セクション)。0.1% のプルアップと 0.1% のプルダウンの 2 つのオプションがあります。
NTSC 方式用のビデオの +0.1% のプルアップ
NTSC 方式のビデオはオリジナルのフィルムより -0.1% 遅く再生されるため、ビデオの速度を +0.1% プルアップすると、オリジナルのフィルムの速度に戻ります。フィルムの速度と同じ速度でビデオを再生すると、フィルム撮影時に元々 48 kHz で記録されていたオーディオとビデオとの同期が保たれます。また、アナログコピーしたりサンプリングレートを変換したりしなくても、最終的なミックスを元のように 48 kHz のフィルムにデジタル変換できます。
ビデオの -0.1% のプルダウン (非標準)
NTSC 方式のビデオ用にビデオの速度をプルダウンする処理は、標準的な手順ではなく、通常はこのような処理を行なう必要はありません。24fps で再生されているビデオファイルを -0.1% プルダウンすることで、NTSC 方式のビデオの速度で再生されている素材と同期させることができます。処理後のフレームレートは 23.976fps です。
ビデオの速度を上下できるのは、ビデオがコンピューターのビデオカードを介して再生されている場合のみです。プロ仕様の GenLock 対応ビデオカードを使用している場合、ビデオの再生速度は GenLock 入力によって決まります。
23.976fps の使用目的
デジタルビデオの形式は日々変化しており、映画、テレビ、商用ビデオなどに関わるすべてのメディア関係者にとっても変化の連続です。内部的にいくつかの異なるフレームレートで記録できる HD カメラの出現により、撮影技師が利用できるオプションは大幅に増えました。
24fps のフィルムの映像には独特の味わいがあります。そのため、多くの HD 映像は、ビデオでフィルムと同じ効果を出すために 24fps で撮影されています。24fps から 29.97fps の NTSC 方式への速度の変更は (0.1% のプルダウンを必要とする) 非常に半端なものであるため、フィルムのように記録しながら、速度を変更しなくても NTSC 方式のビデオ信号も同時に出力できるカメラが設計開発されました。このようなカメラは、24fps に -0.1% のプルダウンを適用した状態である 23.976fps で記録します。