EBU ラウドネス標準 R-128
EBU のラウドネス推奨規格である R-128 では、ラウドネス、ダイナミクス、およびピーク値を計測する明確な方式が確立されており、計測時の基準値も定められています。これらの基準値は放送業界向けに定められていますが、その計測方式はオーディオおよびラウドネスのコントロールを扱うあらゆる用途において役立ちます。
これらのオーディオ計測は、WaveLab Cast のさまざまな場所で、メーター表示、オーディオ解析、および処理に対してサポートされています。
ラウドネスの計測
この方式では、ラウドネスのレベルに対する人間の聴覚上の周波数感度が考慮されています。計測には、以下の 3 種類があります。
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統合ラウドネス (プログラムラウドネスともいう): オーディオの平均ラウドネスを表わします。この計測では、長い無音部分を無視するゲーティング方式が使用されます。
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ショートタームラウドネス: 3 秒間のオーディオブロックにおける 1 秒ごとのラウドネスが計測されます。これによって、ラウドネスが最も高いオーディオ部分に関する情報が得られます。
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モーメンタリーラウドネス: 400 ミリ秒の範囲で 100 ミリ秒ごとにオーディオを計測します。これによって、ラウドネスに関する瞬時のフィードバックが得られます。
ラウドネスレンジ
オーディオ信号のダイナミクスが計測されます。ラウドネスが最も高い部分と最も低い部分 (ただし無音部分を除く) との比を示します。オーディオは小さなブロックに分割されます。1 秒ごとに 1 つのオーディオブロックがあり、各ブロックは 3 秒間の長さがあります (解析対象のブロックは重複します)。
ラウドネスが低い上位 10% のブロックと、ラウドネスが高い上位 5% のブロックは、最終的な解析対象から除外されます。計算されるラウドネスレンジは、残りのオーディオブロックの中でラウドネスが最も高いブロックと最も低いブロックとの比になります。この計測は、圧縮または拡大をオーディオに適用するかどうか、およびどれくらい適用するかの判断に役立ちます。
トゥルーピーク
デジタル信号からアナログ信号への変換時にクリッピングおよび歪みを発生させないようにするために、EBU R-128 ではデジタルピークを使用せず、実際のピークの推定値を計測することを推奨しています。この推定値は、信号に対して 4 倍のオーバーサンプリングを行なってピーク値を保持することで計測されます。
名前と単位
EBU R-128 では、以下の名前と単位に関する表記規則が推奨されています。
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相対的な計測値 (基準レベルに対する値など) は、LU (Loudness Unit) (1LU は 1dB と同値) で表わされます。
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絶対的な計測値は、LUFS (Loudness Unit Full Scale) で表わされます。1LUFS は、AES-17 規格での 1dB と解釈できます。
WaveLab Cast では、EBU R-128 ラウドネスに関連する表現には、dB のかわりにこれらの単位を使用します。