クロックソース
ポジションが決まれば、同期を行なううえで次に大事な要素は「再生速度」です。2 台のデバイスが同じポジションから再生をスタートした場合、同期を保つには両方がまったく同じスピードで動く必要があります。適切に同期を行なうには「マスター」となる速度の基準 (リファレンス) を決め、システム内にあるすべてのデバイスをそれに合わせる必要があります。デジタルオーディオの場合、この速度を決めるのはオーディオクロックレート (サンプリングレート) です。ビデオの場合、速度はビデオ同期信号によって決まります。
オーディオクロック
オーディオクロック信号はデジタルオーディオデバイスのサンプリングレートに従って動作します。信号を転送するには以下の方法があります。
- ワードクロック
これはデバイス同士を BNC 同軸 (コアキシャル) ケーブルで接続し、サンプリングレートに従って専用の同期信号をやりとりする方法です。オーディオクロックとして最も信頼性が高く、接続や操作も比較的簡単です。
- AES/SPDIF デジタルオーディオ
この形式のデジタル信号にはオーディオクロック情報が含まれています。このクロックソースは速度のリファレンスとして使用できます。基本的にはオーディオデータの含まれていない信号 (デジタルブラック) を利用するのが理想的ですが、オーディオ素材の入った信号を使うこともできます。
- ADAT Lightpipe
これは Alesis 社によって開発された 8 チャンネルのデジタルオーディオ転送規格 (プロトコル) です。この規格にもオーディオクロックが含まれているので、速度のリファレンスとして使用できます。この同期を行なうには、デバイス同士をオプティカルケーブルで接続して信号をやり取りします。
ADAT Lightpipe プロトコルに含まれているオーディオクロックを ADAT Sync と混同しないように注意してください。ADAT Sync は専用の DIN プラグ接続を通してタイムコードの通信やマシンコントロールを行なう規格です。
ビデオの同期
ビデオを同期するには、デバイス同士を BNC 同軸 (コアキシャル) ケーブルで接続し、ビデオデバイスのサンプリングレートで信号を送受信します。
ビデオの同期信号には以下の 2 種類があります。
Bi-Level (ブラックバースト)
Tri-Level (HD ビデオ用)
ビデオデバイスを速度のリファレンス (基準) として使用するときは操作が少し複雑になります。この場合、オーディオデバイスが正しい速度で同期できるよう、ビデオ同期信号をオーディオクロック信号に変換する必要があります。操作は以下の要領で行なえます。
SyncStation など、専用のシンクロナイザーを使う場合
専用のシンクロナイザーデバイスは、ビデオ同期信号などを受信してワードクロックか AES/SPDIF 信号を生成し、その信号をオーディオクロックソースとして利用することで同期できます。
ハウスシンクジェネレーターを使用する場合
ハウスシンクのマスター信号生成装置は同じソースからビデオ同期信号とオーディオクロックを同時に生成できるものもあります。これによって、シンクジェネレーターに同期させたビデオデバイスとオーディオデバイスの両方を同じ速度で走らせることができます。
オーディオカードやオーディオインターフェースのなかには、ビデオ同期信号をオーディオクロックソースとして利用できる製品があります。その場合、専用のシンクロナイザーデバイスを使うのと同じように同期を行なえます。
同期を行なう場合、入力されるビデオ同期信号と Nuendo プロジェクトのフレームレートが必ず一致するように注意してください。
MIDI クロック
MIDI クロックは楽曲の小節や拍に基づいたタイミングデータやポジション情報を使ってロケーション (再生位置) や速度 (テンポ) を指定します。他の MIDI デバイスに対するポジションや速度のリファレンスとして、この信号を利用することもできます。 Nuendo は外部デバイスに対して MIDI クロック信号を送信できます。ただし、入力される MIDI クロック信号に対して Nuendo がスレーブとして動作することはできません。
デジタルオーディオの同期に MIDI クロックを使用することはできません。MIDI クロックは MIDI デバイス同士を互いに同期させるためにだけ使用します。 Nuendo を MIDI クロックスレーブとして使用することはできません。